北海道弟子屈、TAPKOPの空撮
VISION × HISTORY

メルカリとNOT A HOTELで学んだこと、SOLUNAで試していること。

日本全国に、空き家が1,000万戸ある。

そのうちの多くは、誰も住んでいないのに固定資産税だけが発生して、老朽化しながら朽ちていく。一方で、「別荘を持ちたい」という人はたくさんいる。持てないのは、価格が高いから、管理が面倒だから、一人で維持するコストが重いから——という理由がほとんどだ。

この「持て余している場所」と「持ちたい人」を、もっとうまくつなぐことはできないか。そういうことをずっと考えてきた。

考えてきた背景には、2つの経験がある。メルカリと、NOT A HOTELだ。

メルカリが教えてくれたこと

2014年から、メルカリのCPO(最高プロダクト責任者)として製品設計に関わった。あのプロダクトの核心は、シンプルだ。「持っている人」と「使いたい人」をつなぐ。それだけだ。

フリマという概念は昔からあった。でも、スマートフォンのカメラと決済と評価システムを組み合わせることで、「売るのが面倒くさい」という摩擦がほぼゼロになった。摩擦がゼロになると、使われていなかったものが一気に流通し始めた。タンスの中の服が、本棚の本が、子供が使わなくなったおもちゃが。

それと同じことが、不動産でも起きるはずだと思っていた。

使われていない別荘、使われていない空き家、使いきれない土地——それらを「使いたい人」とつなぐ仕組みを、誰かが作るべきだと。ただ、不動産は服より複雑だ。法律があって、修繕が必要で、誰が管理するかという問題がある。だからこそ、まだ誰も解いていない。

フリマが「使われていないもの」を動かしたように、共同所有は「使われていない場所」を動かせる。

NOT A HOTELで見えたこと

2018年から、NOT A HOTELの立ち上げに関わった。共同創業という立場で、6年間、プロダクトとビジネスを内側から見た。

NAHの基本思想は正しかった。別荘を一人で持つのではなく、複数人で分割所有して、使わない時間は賃貸収益に変える。日本初の本格的な共同所有モデルで、それはたしかに機能した。

ただ、2つのことが気になり続けた。

ひとつは、価格だ。NAHの最安クラスでも、1口あたり2,000万円前後からスタートする。それは多くの人にとって届かない価格帯だ。共同所有という概念を、もっと多くの人に開きたい——そのためには、エントリーポイントを下げる必要がある。

もうひとつは、建築の作り方だ。NAHの物件はどれも美しい。著名建築家が設計して、高品質な素材を使って、丁寧に作られている。でも、それはまったく新しい建物を建てるモデルだ。日本にある1,000万戸の空き家には手が届いていない。

2018
NOT A HOTEL 共同創業

共同所有モデルの可能性を確信した6年間

「別荘を分割して所有する」という概念が日本で機能することを証明した。同時に、「価格の壁」と「新築偏重」という2つの課題を内側から見た。

空き家 × 共同所有 という掛け算

SOLUNAはその2つの課題への回答として始まった。

空き家を対象にする。すると取得価格が劇的に下がる。北海道弟子屈では、THE LODGEを980万円で取得した。東京の小さなワンルームより安い価格で、自然の中に立つ本格的な木造建築が手に入る。

そこに共同所有モデルを適用する。8口に分割すれば、1口あたり122.5万円。手付金10万円から始められる。「別荘を持つ」という体験のエントリーポイントが、大幅に変わる。

さらに、使われていない時間はBeds24で運用して、収益をオーナーに還元する。THE LODGEは年間1,000万円以上の稼働実績がある。この数字は誇張でも理想値でもなく、実績だ。

新しい建築手法を実験する場所としても

もうひとつ、SOLUNAで試したいことがある。建築の方法論を変えることだ。

日本の空き家問題の根にあるのは、「古い建物には価値がない」という思い込みだ。新築を建てることが正しく、リノベーションは妥協だという価値観がある。でも、本当にそうか。

北海道弟子屈の美留和ビレッジは、約10.7ヘクタール(3万坪以上)の原野だ。ここに、これまでとは違う建築手法で建物を作ろうとしている。麦わら(ストローベイル)、廃棄木材、地元の石材、菌類(マイコリウム)を使った素材——土地の持っているものを使って、建物を作る。

輸送コストがかからない。廃棄されるはずのものが素材になる。完成した建物はその土地に固有の表情を持つ。そういう建築が、日本中の空き家再生にも応用できるはずだ。

土地にあるものを使って建てる。それが一番安く、一番美しく、一番長持ちする。

弟子屈から始まって、どこへ向かうか

弟子屈で始まったSOLUNAは、今、複数の方向に動いている。

香川・瀬戸内では、小豆島と伊吹島の空き家プロジェクトを進めている。島という立地は、「使うために意志が要る場所」を作り出す。気軽には来られないが、来れば深い体験がある。

ハワイでは、ホノルルとハワイカイの2拠点を展開中だ。日本と海外をセットで持てるという体験は、既存のどの別荘サービスにもなかったものだ。

和歌山の海岸線、白馬の山岳地帯——それぞれ違う自然環境と、違う建築手法の実験地として考えている。均質なリゾートを量産するのではなく、それぞれの場所の固有性を最大化すること。それがSOLUNAのやり方だ。

弟子屈の夜明け、SOLUNA LODGEからの眺め

空き家再生は、次の10年の最大のテーマだ

2030年には、日本の空き家率が20%を超えると言われている。5軒に1軒が空き家になる社会だ。それは問題として語られることが多いが、別の見方をすれば、「使われるのを待っている場所」が日本全国に膨大に存在するということでもある。

その場所に、適切な人をつなぐ仕組みを作れば、地方の過疎は「課題」ではなく「機会」に変わる。メルカリが使われていないものを動かしたように、SOLUNAは使われていない場所を動かしたい。

NAHで学んだ共同所有のモデルを、もっと多くの人が参加できる価格帯に落とす。弟子屈から始まった実験を、日本各地の空き家に適用していく。新しい建築手法と組み合わせることで、コストを下げながら体験の質を上げる。

それが、今SOLUNAがやっていることの全体像だ。

まだ実験の途中で、完成形はない。でも、方向性は決まっている。持て余されている場所を、最高の体験に変える。それを、共同所有というかたちで多くの人に開く。

SOLUNA — STORY
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濱田 優貴
Enabler Inc. CEO / 元メルカリ CPO / NOT A HOTEL 共同創業者 / 柔術青帯
SOLUNA JOURNAL

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