旅が好きだ。
ポーカーも好きだし、サウナも好きだし、柔術も好きだ。映画が好きで、音楽が好きで、音響にうるさい。良いベッドじゃないと眠れないし、安全な環境じゃないと落ち着かない。ホテルも好きで、世界中のホテルに泊まってきた。
でも、ある時から思うようになった。ホテルに泊まり続けることと、「帰れる場所がある」ことは、全然違う。
チェックアウトする時の感覚。「また来ます」と言っても、次は知らないスタッフが対応して、部屋の番号も変わって、前回積み上げたものは何もない。それ自体は悪いことじゃない。でも、そうじゃない場所も欲しかった。
「帰れる場所」をみんなで持つ
SOLUNAを始めた理由は、難しいことじゃない。
自分が好きな人たちと、一緒に帰れる場所を持ちたかった。そしてその場所を、みんなで少しずつ育てていけたら面白いと思った。ただそれだけだ。
一人で別荘を買うと重荷になる。高い、維持が大変、使わない時間がもったいない——よく聞く話だ。でも、10人で持てばどうか。コストは10分の1になって、使われない時間は賃貸として回して、メンテナンスはプロに任せられる。
それ以上に、「同じ場所を一緒に育てている」という感覚が生まれる。あの薪ストーブを入れたのは誰、あの棚を作ったのは誰——そういう記憶が積み重なっていく場所。ホテルには絶対できないことだ。
純粋な気持ちで、でもビジネスとして正しくやる
「純粋な気持ち」から始めていても、ビジネスとして正しくやらなければ続かない。
共同所有には法律がある。資産管理のルールがある。オーナー間の合意形成が必要で、透明性が必要で、収益配分の仕組みが必要だ。NAHで6年間、その複雑さを内側から見てきた。
だから、SOLUNAはちゃんとやる。手付金10万円から始められる仕組み。利益の50%をオーナーに還元する明示的なルール。Beds24を使った稼働管理の透明化。電子契約(Pon)で取引を記録する。テクノロジーで、信頼を作る。
「なんとなく仲良いからうまくやれる」は、ビジネスとしては弱い。仕組みが信頼を担保して、仲の良さがその上に乗る——そういう順番でやりたい。
空き家、エネルギー、環境。でかいことをやろうとしている。
でも、純粋な気持ちの話だけではない。
日本に空き家が1,000万戸ある。2030年には5軒に1軒が空き家になる。それは放置されたまま、老朽化して、最終的に解体されて産業廃棄物になる。そのコストと環境負荷は、数兆円規模だ。
SOLUNAが空き家を「帰れる場所」に変えることは、その問題の一部に直接触れることになる。使われていない場所に人が戻る。地域に経済が生まれる。建物が寿命を延ばす。廃棄物が減る。
さらに、建築の手法も変えたい。弟子屈の美留和ビレッジでは、菌類(マイコリウム)を素材にしたパネルの実験をしている。菌糸を型に入れて育てると、断熱性能が高くて軽くて生分解可能な建材ができる。農業廃棄物から作れるから、輸送コストも二酸化炭素も最小になる。
これは一つの例だ。ストローベイル、廃棄木材、地元の石材——土地の持っているものを使って建てる建築は、エネルギー効率が高く、環境負荷が低く、そしてその土地にしかない表情を持つ。
テクノロジーで、このプロセス全体を変える
建築と不動産だけの話じゃない。テクノロジーでやれることがある。
空き家のデータベースを作る。適切な物件を適切な人に届けるマッチングを作る。共同所有のオーナー間コミュニケーション、収益配分の自動化、予約管理、電子契約——それぞれをシステムとして組み上げていくことで、「空き家を共同所有に変えるコスト」を大幅に下げられる。
コストが下がれば、もっと多くの物件で実験できる。実験が増えれば、何が機能するかが分かる。分かったことをまた次の物件に適用する。
弟子屈から始まった実験が、香川の島に、ハワイに、和歌山に、白馬に広がっていくのはそういうことだ。均質なリゾートを量産するのではなく、それぞれの場所の固有性を最大化しながら、仕組みだけを共通化する。
なぜSOLUNAか
もう一度、最初に戻る。
旅が好きで、ポーカーが好きで、サウナが好きで、柔術が好きで、映画と音楽と音響が好きで、良いベッドと安全な環境が好きだ。ホテルも好きだ。でも、みんなで持って育てられる場所が欲しかった。
その純粋な気持ちから始めて、空き家問題を解決して、エネルギー効率と環境問題に大きなインパクトを与えるビジネスを、テクノロジーを使いながら、法律に則って正しくやる——それがSOLUNAだ。
でかいことをやろうとしているのは分かっている。でも、始まりは純粋な気持ちで十分だと思っている。